焼肉や激辛料理などが人気の韓国料理だが、暑いこの季節、韓国人にとって『参鶏湯』(サムゲタン)も、なくてはならないメニューの一つらしい。『参鶏湯』は漢字から想像する通り、「鶏」は鶏肉、「参」は高麗人参を表し、高麗人参と鶏肉を煮込んだスープという意味。若鶏のお腹に、もち米や高麗人参、なつめ、松のみなど山海の珍味を詰め、じっくりと煮込んだ料理だ。
中に詰める食材は各家庭、お店によって違うが、なつめ、高麗人参、にんにく、栗、ぎんなん、鹿角やファンギといった漢方食材、それにもち米が基本。 鶏本来の味を楽しむために、味付けは薄い塩味のみ。鶏のおなかに詰めた食材と鶏の骨髄からしみ出すうまみだけで美味しいスープとなるのだ。食べるときに、塩・こしょうで自分の好みの味に調整し、ねぎや青唐辛子などの薬味を添えるのが一般的。
麻布十番にある参鶏湯専門店『グレイス』では、「先ず鶏肉を塩・こしょうに付けて食べ、次にスープと鶏を一緒に食べる。最後に『カクテキ』(キムチの一種)の汁を合わせて食べる」が、お勧めらしい。
暑い夏の定番料理
韓国では、『参鶏湯』は夏のスタミナメニューとして定番で、特に1年のうちで最も暑いとされている「庚の日」に、疲労回復のため『参鶏湯』を食べる習慣がある。この日は、韓国の『参鶏湯』専門店には長い行列ができるそうだ。日本の「土用の丑の日」にうなぎを食べる感覚に似ているのかもしれない。
『グレイス』に伺ったところ、やはり夏場、特に「庚の日」の来店が多いらしい。
「滋養強壮のために食べに来られるお客様が多いですね。『参鶏湯』は韓国人にとっては夏の風物詩のひとつなのではないでしょうか」
「滋養強壮のために食べに来られるお客様が多いですね。『参鶏湯』は韓国人にとっては夏の風物詩のひとつなのではないでしょうか」
大切な人を想う優しい味
では、家庭の食卓にのる『参鶏湯』はどんなものなのだろうか? 韓国料理研究家であり、韓国料理教室も行っている金徳子先生は、「『参鶏湯』は鶏1羽を使う特別料理です。手間隙惜しまず、家族や大切なお客様を想い、時間を掛けてじっくりと煮たスープは優しい味がします。それに栄養価が高く、滋養強壮の元祖ではないでしょうか。じんわりと身体によいスープです」と家庭で作る『参鶏湯』を紹介する。
「お客様をおもてなしする際には、ホストである家長が鶏の真ん中を割り、中身とスープを取り分けるのが正式な作法です」(金先生)
日本では土用の丑の日にうなぎを、韓国では庚の日に参鶏湯を……と、その国の風土や気候に合った、身体を労わる食習慣がある。これら料理は、身体に良いだけではなく、食卓に並ぶことで『夏』を演出させる効果もあるようだ。
改めて、昔から伝わる料理の効果を見直してみるのはどうだろう。
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